松島屋ないまぜ帖
2022.04.24
明治時代の東京の風景
明治の終わり頃
京橋木挽町に住んでいらしたのが
日本画の巨匠
鏑木清方先生。
こちらは伊東深水先生が描いた鏑木先生↓
今、没後50年鏑木清方展が
東京竹橋の国立近代美術館で
開かれています。
数ある作品の中で
印象深いのは
「雛市」
人形屋の前の
一瞬の風景です。
「お母様、あのお雛さま、買ってぇ」
「どれどれ?」と
母親の手を引っ張る娘は
立派な振袖に桃割れ姿。
別珍の朱色のストールが
贅沢な暮らしぶりを表しています。
そんな二人越しに人形を見ているのは
同じ年頃の娘さん。
頭に手拭いを被り
裸足です。
桃の花を売り歩いているのか
どこかのお屋敷へ運んでいるのか。
残酷なまでの対比ですが
救いは
桃売りの娘さんが
粗末ながらも
継ぎ当てのない
こざっぱりとした姿で
足が汚れていないこと。
鏑木先生曰く
明治時代は
貧しい暮らしであっても
裏道までキッチリ掃除が行き届き
鍋釜もピカピカに磨かれていた、と。
お金のある無しとは違う尺度で測る
人間の幸せ。
鏑木先生の人間愛を感じます。